■8月24日「2003年度、第4回全日本アマチュアギターコンクール」を、例年どおり三鷹市芸術文化センターにて盛会のうちに終了することができました。このコンクールは標記のとおりアマチュアとしてギターを弾かれている方々に“より大きな楽しみの舞台”を提供しようとするもので、他のギターコンクールとは違った目的を持って、アイデアを凝らしながら運営しています。当日は47名の方が〈最終予選〉に臨まれ、10名を本選に選出。第1〜3位の各賞の他、「特別賞」「Verde賞」「チリテント賞」を選び、表彰と審査講評を行なって、参加してくださったアマチュアギタリストの健闘をたたえつつ閉会となりました。
【第一次・第二次予選(テープ審査〜6月実施)】
第一次予選は例年〈禁じられた遊び〉を課題曲とし、大きな破綻がなければ第二次予選に進んでもらいます。第二次予選、ジュリアーニ〈アレグロ〉は概ね技術的にしっかり弾けていましたが、〈アレグロ〉のテンポが感じられなかった方、明かな読譜ミスをされていた方を止む無く失格としました。テープはステージと違い、演奏を繰り返しチェックできるのですから、どうか読譜には万全を尽くしていただきたいと思いました。
【最終予選】
コストの有名なニ短調のエチュードを課題曲としました。美しい作品で技術的な困難さが少ないだけに、緊張するステージにもかかわらず各自がそれぞれ思い入れのある歌を聴かせてくれて、これは今年の大きな収穫でした。審査員からは「審査していて楽しい」との声の一方、「優劣をつけるのがたいへん難しく、良い音楽なのにちょっとしたミスで落ちてしまったら気の毒」が懸念されましたが、結果的に審査員の考えがほぼ一致する形で「ミスの如何にかかわらず美しい音楽を演奏した」10名が選ばれたのも嬉しいことでした。なお最終予選の演奏者全員に、審査員筆記のコメント(グラフとメモで記入)を渡すのもこのコンクールの特色の一つとしています。
【本選】
審査には、井桁典子、江間常夫、斎藤明子、志田英利子、鈴木大介(以上ギター)、越智光輝(クラリネット)、堀江志磨(ピアノ)の7名が当たり、出された主な感想と結果は次のとおりです。
▼青木 聡(アルベニス〈アストゥリアス〉)
流れとテンポ感のある安定した演奏でしたが、中間部の表情がもう一歩だったようです。
▼山本孔彦(コスト〈ジュラの思い出〉)
序奏部のハーモニックスはたいへん美しく期待させましたが、ポロネーズは未消化で残念。
▼水野 治(バッハ〈プレリュードとガヴォット〉〜リュート組曲第4番)
思い入れある力演でしたが、力が入り過ぎでもう少し表現にゆとりが欲しかったです。
▼日方薫子(アンヘル・バリオス〈グラナダの花〉、ショーロ(不詳))★特別賞
自然な表現と美しい音で流れも良かったです。あとはダイナミックさや力強さがあったら。
▼中津川久夫(ラウロ〈トリプティコ〉)
たいへん丁寧で美しい音楽を聴かせてくれましたが、やや地味だったのは選曲のせいも?
▼新居元行(ソル〈魔笛の主題による変奏曲〉)★Verde賞(年配者の優れた演奏に)
多少のキズはありましたが、心を注いだタッチと音色は審査員をも感動させたようです。
▼中島美奈子(横尾幸弘〈埴生の宿による変奏曲〉)★特別賞
音の強さはないけれど、歌わせるのを楽しんでいるのがよく分かる演奏。上位にあと一歩。
▼小川 敬(アルベニス〈アストゥリアス〉)★第2位
引き締まった堂々たる演奏。力強さ立派さの他に優しさみたいなものが欲しかったかも?
▼池端広幸(ダウランド〈ファンタジー〉)★第3位
美しい音と明快・冷静な音楽。しかしやや恣意的な部分もあり評価が難しかったようです。
▼加納英夫(アグアド〈ロンド〉)★第1位
音色や表情に幅をの声もありましたが、素晴らしいテクニックは審査員を感心させました。
加納さん、小川さんは本選で弾いた1曲に関しては、どこのコンクールに出しても恥ずかしくないものでした。しかし総合的には2人に及ばないものの、審査員の心を捉えた演奏は他にもあったでしょう。そんな演奏にどのように光を当てていくかは、このコンクールのこれからの課題です。そして予選に通った通らなかった、選に入った洩れた、その結果だけでなく、出場してくれたすべての人が心に残る何かを持ちかえってもらえるような、そんなコンクールを目指していきたいと思います。
(なお最終予選審査の間に、昨年度優勝者・鈴木和彦さんのゲスト演奏。本選審査の間には、ステージ上で本選出場者全員へのインタビューが行なわれ、司会者との楽しいやりとりが会場を和ませました)
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■ 本選出場者10名
前列左より Verde賞:新居、第3位:池端、第2位:小川、第1位:加納
特別賞:中嶋、次席&特別賞:日方
後列左より 青木、山本、水野、中津川 |
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■ 講評を述べる江間常夫
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■ 表彰を受ける第1位の加納英夫 |